『AX』伊坂幸太郎 殺し屋、兼恐妻家の心温まる話
最強の殺し屋は恐妻家?
どうも、こんにちは!
最近、意識だけが高くなってきた21歳です。
今回は、伊坂幸太郎さんの『AX』です。
3年くらい前に単行本が発売されて以来、ずっと読ん見たかったんですが、やっと今年に入ってから文庫化されたので読んでみました。
主人公は、殺し屋兼恐妻家
主人公は、最強の殺し屋「兜」。普段は、文房具メーカーの営業として働く傍ら、依頼された人間を淡々と殺していく腕利きの殺し屋である。
しかし、そんな彼はなんと恐妻家。
妻が寝静まった夜に帰宅する際には、物音を立てることは許されない。
日々、ターゲットを殺害しては妻に怯えながら生活する毎日。
「包装しているビニールを破る音、ふたを開ける音、お湯を入れる音、深夜に食べるにはあまりにもうるさい」
「誰も気づきはしないだろうに」
「うちの妻は気づく」兜は答える。
日常に潜む違和感
主人公は、そんな全く異なる2面性をもっているわけだが、この小説には違和感が感じられる。それは、普段の生活の中に、暗殺という物騒なものが当たり前に登場するからである。だから、前半部分はSFを読んでいるような気分にさせれられた。
蟷螂の斧
「AX」は「axe」(斧)からきていて、その由来も前半部分で明かされる。
主人公は、恐妻家なので尻に敷かれているわけだが、いつかはガツンと言ってやりたい、という事を息子に説明する際に「蟷螂の斧」ということわざが用いられる。
「蟷螂」はカマキリのことで、カマキリが両手を上げて威嚇している様子を表している。様子は勇ましいが、しょせんはカマキリ、という意味。
しかし、主人公は自分なりに解釈しており、「弱くてもいつかガツンといってやる!」という意味で捉えている。
「弱いにもかかわらず、必死になって立ち向かう姿を、蟷螂の斧という。」
変化
物語は、途中まで物騒ながらも、淡々とした雰囲気ですすんでいくが、途中からこれまでの違和感に変化が現れ、急展開を迎える。
感動のフィナーレ?
最後には、伊坂幸太郎作品の醍醐味ともいえる伏線回収。そして、とても温かい気持ちで本書を読み終える事ができると思う。
感想
この本を読み始めた頃は、例の違和感のせいで現実味があまり感じられず、すらすら読む事が出来ませんでしたが、後半からは、ミステリーの要素が追加され、スピード感もあり一気読みすることが出来ました。
最近、小説からは少し距離を置いていたのですが、この小説のおかげで「やっぱり小説は楽しい!」と思えました!
特に、伊坂幸太郎さんの小説は伏線回収があることが多く、THE 小説だと私は勝手に思っています。
恐妻家の人、温かい気持ちになりたい人、伏線回収されたい人にはお勧めの小説です!