拳で抵抗する21歳

世間に、拳で抵抗したい。そんな21歳の夏。書評や投資、思いついた事を綴ります。

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かがみの孤城(辻村深月)の感想

かがみの孤城辻村深月)の感想

 

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どうも大学に行っていない大学生兼就活生です。

本書は、2018年の本屋大賞に選出された作品で、私はこの本をずっと読んでみたいと思っていましたが、単行本の554ページという分厚さと値段の高さから避けていました。しかし、最近kindleを買ったおかげでこのハードルを突破することが出来ました。

 

 

 

あらすじ

7人の心に傷を抱えた中学生たちが、ある日「城」に集められ、狼面をかぶった少女に願を叶えるための部屋の鍵がこの「城」に隠されていると言われます。また、この「城」は一定時間開放されており、この「城」で登場人物たちが絆を深め合い、大人になっていくというストーリーです。

 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

 

 

感想

読み始めの印象は、SF色の強い作品で自分とは相性が悪そうだなと思いましたが、登場人物たちの抱える問題はノンフィクションに思えるほどにリアルな悩みだったのでかなり感情移入しやすく、読みやすいストーリーでした。

 

特に印象的だったのは、主人公のこころの問題についてです。こころの悩みは単純ないじめや喧嘩で片づけられない問題でした。厄介なのは、問題を起こしている本人や周囲の大人の問題意識とこころの問題意識にズレが生じているという事です。この壁に気づいたこころは、世の中には全く違った価値観を持った人間が存在するという事に気が付きます。私も過去に、いじめられた経験があり、当時はなぜ自分が攻撃されなければいけないのかわかりませんでした。しかし、加害者にはこの本で出てくるいじめっ子のような彼らなりの「正論」があったのかもしれません。

 

しかし、同じような価値観を持ち自分を助けてくれるような他人もいるというのが、この本の大切な考え方だと思います。私はkindle版だったので帯はありませんでしたが、ネットで帯を見ると「あなたを、助けたい。」とありました。私にはいじめから救ってくれた人がいて、その時に自分から「助けて」と言う事ができて本当によかったと思っています。この本では、登場人物たちが涙ぐむ場面が多く出てきますが、そのたびに弱い自分をさらけ出すことで辛さを克服して強くなっていきます。

若いうちに挫折したほうがいいという人が多くいますが、実際にその意味が少しわかったような気がしました。赤ちゃんはケガをしていきながらやっちゃいけない事を学びますが、大きくなってもそうだと思います。辛いを思いをして初めて精神的に強くなれますし、他人の痛みが分かるようになるのだと思います。

 

今回は我ながら少し恥ずかしい文章を書いてしまったような気がしますが、私もこの本に出てくる喜多島先生のような、他人の痛みを理解してあげられる人間になりたいと思いました。